【銘柄分析)オールカントリー(ACWI)の2025年における躍進を分析 米国以外の国々編

個別銘柄研究

2025年の投資信託では、オールカントリー(以下 オルカンという)のパフォーマンスが驚くほど良かった。前半では、その要因としてオルカンの6割を占めるアメリカについて分析しましたが、今回は、オルカンを構成しているアメリカ以外の国々について分析してみました。

第4章 米国以外で大きく貢献した国と企業:2025年の真の勝者たち

2025年のオルカン投資信託の成績が特筆すべきものであった理由は、米国以外の国々が、米国を上回るパフォーマンスを叩き出した点にあります。以下に、その「真の勝者」たちを詳細に分析してみます。

4.1 【韓国】世界最高のリターンを記録した「K-Rally」の衝撃

2025年の株式市場において、最も劇的な上昇を見せた主要市場は韓国でした。KOSPI指数は年間で約76%という驚異的な上昇を記録し、主要国市場の中で突出した成績を残しました。これは、1987年、1999年に次ぐ歴史的なブームであり、世界中の投資家の注目を集めています。

4.1.1 要因分析:半導体と改革の融合

  1. AI半導体(HBM)の支配的地位:
    韓国市場の上昇を牽引した最大のエンジンは、AIサーバーに不可欠な「高帯域幅メモリ(HBM)」です。SKハイニックスは、NVIDIA向けHBMの主要サプライヤーとして市場を独占し、株価は年初来で3倍近くに急騰しました。また、出遅れていたサムスン電子もHBM供給への参入期待とファウンドリ事業の回復により株価が125%上昇し、過去最高値を更新しました。これら2社だけでKOSPI時価総額の約30%を占めており、その上昇が指数全体を強力に押し上げという結果です。
  2. 「企業バリューアップ・プログラム」の成功:
    韓国政府が2024年から推進してきた「企業バリューアップ・プログラム」が2025年に本格的な成果を上げました。PBRが低い企業に対して株主還元策の開示と実行を強く求めた結果、配当性向の向上や自社株買いが急増しました。さらに、商法改正により取締役の忠実義務の対象に「株主」が含まれたことで、少数株主の権利保護が進み、外国人投資家の信頼を回復させたということです。
  3. 政治的混乱からの「逆転劇」:
    2024年末の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による戒厳令宣言とそれに続く弾劾、そして2025年の新政権誕生という政治的激動が、逆説的に市場の不透明感を払拭しました。新政権下での経済政策の継続性と安定性が確認されたことで、リスクプレミアムが剥落し、株価の急騰につながりました。

4.1.2 主要貢献企業

  • SK Hynix: AIメモリ市場の王者として、ACWI ex-USA(オルカン 除く米国)のパフォーマンストップクラスに君臨。
  • Samsung Electronics: 半導体サイクルの回復とともに、コリア・ディスカウント解消の象徴として上昇。
  • Hanwha Aerospace / Hyosung Heavy Industries: 地政学リスクの高まりによる防衛需要と、AIデータセンター向けの電力機器需要により、株価が数倍になる「テンバガー」級の成長を見せた。

4.2 【スペイン】欧州最強のパフォーマンス、IBEX 35の躍進

欧州市場においては、ドイツやフランスが国内景気停滞に苦しむ中、スペインのIBEX 35指数が約54%の上昇を記録し、欧州主要国で断トツのパフォーマンスを示しました(ドイツ市場は景気と違い、盛況でした)。

4.2.1 要因分析:銀行と観光の二本柱

  1. 銀行セクターの収益爆発:
    IBEX 35は銀行セクターの比率が約40%と非常に高い特徴を持ちます。ECB(欧州中央銀行)の利下げペースが緩やかであったこと、およびスペイン経済の堅調さを背景に、Banco Santander、BBVA、CaixaBankといった主要銀行が記録的な純金利マージンを享受しました。これらの銀行株は30%〜60%の上昇を見せ、指数を牽引。
  2. マクロ経済の優位性:
    スペインは観光業の完全復活と内需の強さにより、ユーロ圏平均を大きく上回る経済成長率を達成。これにより、企業業績の見通しが明るくなり、海外からの資金流入が加速しました。

4.2.2 主要貢献企業

  • Banco Santander / BBVA: グローバル展開するメガバンクとして、欧州および南米市場での収益拡大が評価されました。
  • Inditex (Zara): 世界的なアパレル大手として、堅調な消費需要を取り込み株価が上昇しました。

4.3 【台湾・オランダ】AIサプライチェーンの要衝

国全体の指数上昇率では韓国やスペインに及ばないものの、特定の「スーパー企業」を擁する台湾とオランダは、オールカントリー指数の上昇に不可欠な役割を果たしました。

  • TSMC (台湾):
    ACWI ex-USAにおける時価総額最大級の銘柄として、指数の安定上昇に貢献。AIチップのほぼ全てを製造する同社は、地政学的リスク(台湾海峡)を抱えながらも、その技術的優位性と圧倒的な価格決定力により、業績を拡大させ続けました。
  • ASML Holding (オランダ):
    最先端半導体製造に不可欠なEUV露光装置を独占供給するASMLは、半導体メーカーの設備投資回復に伴い受注を伸ばしました。対中輸出規制の影響はあったものの、それ以外の地域(米国、韓国、台湾)からの需要がそれを補って余りある成長をもたらしたということです。

4.4 【ブラジル】資源と金利低下期待の共鳴

ブラジルのボベスパ指数もまた、30%を超える上昇を見せ、新興国市場のリターン向上に貢献。

  • 要因
    世界経済のソフトランディングによるコモディティ需要の維持、特にコーヒー等の農産物価格の上昇が寄与。また、国内の高金利環境からの転換(利下げ期待)と、割安なバリュエーション(PER 6-7倍台)が見直され、リスク選好資金が流入しました。

第5章 2026年の世界経済・市場展望:グレート・インフレクション

2026年は、2025年の「回復と拡大」から、新たな経済秩序への「転換(Inflection)」が進む年になると予想され、市場のテーマは、AIの「導入」から「生産性向上への活用」へ、そして金融政策の「正常化」から「政策ダイバージェンス(分岐)」へと移行すると思われます。

5.1 マクロ経済シナリオ:政策主導から民間主導へ

5.1.1 米国経済の「再加速」とリスク

2026年の米国経済は、関税や政策の不確実性が徐々に消化され、緩和的な金融環境と財政刺激策が効果を発揮することで、再び成長軌道に乗ると予測しています。モルガン・スタンレーは、S&P500が2026年に7,800ポイント(現状から約14%上昇)に達すると予測しています。

一方で、トランプ政権(またはそれに類する保護主義的政策)による関税引き上げは、インフレ再燃のトリガーとなるリスクを孕んでいるのも間違いない。これはFRBの利下げペースを鈍化させ、ドル高圧力を再燃させる可能性があります。

5.1.2 金融政策の分化(ダイバージェンス)

2026年の重要なテーマは、主要中央銀行の足並みの乱れです。

  • FRB(米国): 労働市場の軟化を防ぐために追加利下げを行う可能性が高いですが、インフレ動向次第ではそのペースは不透明。
  • ECB(欧州): 経済成長の弱さから緩和的な姿勢を維持すると見られる。
  • 日銀(日本): 世界的な緩和潮流とは逆に、金利の正常化(利上げ)を進める「アウトライヤー(例外)」となると予想。

この政策のズレは、為替市場にボラティリティ(変動)をもたらし、特に円キャリートレードの巻き戻しや、ドル安による新興国への資金還流といった動きを引き起こす可能性があります。

5.2 投資テーマの変遷:「Tech Tonic」とAIの裾野拡大

ゴールドマン・サックスは2026年の市場を「Tech Tonic(テック・トニック:技術による活性化)」と位置付けている32。

AI投資は、第1フェーズの「学習(Training)」インフラ(NVIDIA、データセンター)から、第2フェーズの「推論(Inference)」や「エッジAI」、そして「応用(Application)」へと移行します。

  • ソフトウェア・サービス: AI機能を実装して業務効率を劇的に改善するSaaS企業。
  • 電力・インフラ: AIデータセンターの稼働に必要な電力を供給する公益企業、冷却システム、送電網関連企業。
  • 非テック企業: AIを活用して創薬プロセスを短縮するヘルスケア企業や、自動化を進める製造業。

これらのセクターへ資金が循環することで、市場の裾野が広がり、一部のメガテック株への集中度が緩和される「ブロードニング(Broadening)」が進むと予想されます。

第6章 2026年に伸びる国と地域の詳細分析

2025年の勝者(韓国、スペイン等)に加え、2026年には新たな国々が投資家の注目を集めると予想されます。特に、2025年に出遅れた市場の巻き返し(リバーサル)や、明確な国家戦略に基づく成長ストーリーを持つ国が有望。

6.1 【インド】2025年の停滞からの強力な「復権」

2025年のインド市場は、外国人機関投資家(FII)による過去最大規模の売り越し(約1.6兆ルピー)に見舞われ、相対的にアンダーパフォームしました。しかし、2026年はインド株にとって「復活」の年になるとの予測がされています。

6.1.1 成長要因と分析

  • FIIの回帰とバリュエーションの適正化:
    2025年の調整により、割高とされていたインド株のバリュエーションは10年平均並みまで低下。米国の利下げによるドル安と、AI関連株への集中投資是正の流れから、成長力の高いインド市場へ再び海外資金が流入する公算が大きい。
  • 業績のV字回復:
    2025年に一桁台に留まったNifty 50企業の利益成長率は、2026年には消費回復と政府支出の再開により二桁成長に回帰すると予測。
  • 構造的な強さ:
    人口動態の優位性、デジタルインフラ(DPI)の普及、そして「チャイナ・プラス・ワン」の受け皿としての製造業振興(Make in India)は長期的な成長ドライバーとして健在。2026年には、市場へのアクセス重視から、企業のライフサイクルや収益力を重視する選別投資へとフェーズが移行。

6.2 【ベトナム】フロンティア市場の筆頭、9%超の成長への挑戦

ベトナムは2026年に向けて極めて野心的な成長目標を掲げており、エマージング市場への格上げ期待も相まって、最も注目すべき市場の一つです。

6.2.1 成長要因と分析

  • 9%のGDP成長目標と「ナショナル・ライズ」:
    ベトナム政府は、2026年のGDP成長率目標を9%以上に設定。これは、公共投資(高速道路、港湾、電力網)の前年比約50%増額という強力な財政出動によって支えられています。政府はこの時期を「ナショナル・ライズ(国家的飛躍)」の始動期と位置付けています。
  • エマージング市場への格上げ:
    ベトナムは現在「フロンティア市場」に分類されていますが、MSCIやFTSEによる「エマージング市場」への格上げに向けた規制緩和(プレファンディング撤廃など)を加速。格上げが実現すれば、数十億ドル規模のパッシブ資金が流入することになります。
  • 輸出競争力:
    トランプ政権下の関税リスクはあるものの、ベトナムは相対的に低い関税率を維持しており、中国からの生産移管先としての魅力は揺るがないと見られています。2026年の輸出は17%増と予測。

6.3 【日本】「サナエノミクス」によるデフレ脱却の完遂

日本株は2026年も引き続き有望な投資先と見られています。特に、新たに就任した高市早苗首相による経済政策「サナエノミクス」が、市場の新たなカタリスト(起爆剤)として機能すると期待。

6.3.1 成長要因と分析

  • サナエノミクス:
    高市政権は、積極的な財政出動と戦略的投資(AI、防衛、宇宙、量子技術)を掲げています。企業の内部留保を設備投資や賃上げ、株主還元へと還流させる政策が強化され、これが日本株のリレーティングを促進。
  • 実質賃金の定着と内需回復:
    持続的な賃上げにより実質賃金がプラス圏に定着し、個人消費が回復することで、輸出頼みではないバランスの取れた経済成長が期待。
  • 日銀の正常化プロセス:
    日銀の利上げは、金融機関(銀行・保険)の収益改善に直結。また、適度な金利上昇はゾンビ企業の淘汰と産業の新陳代謝を促し、日本経済全体の生産性向上に寄与するとの見方があります。

6.4 【メキシコ】ニアショアリングとワールドカップ特需

メキシコは北米市場への地理的近接性を活かした「ニアショアリング」の最大の受益国であり続けるとともに、2026年特有のイベントが経済を後押しします。

6.4.1 成長要因と分析

  • ニアショアリングの深化:
    米中対立の継続により、製造拠点を北米域内に移す動きは不可逆的である。メキシコはUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の枠組みの中で、自動車や家電、電子機器の生産拠点としての地位を固めています。
  • 2026年ワールドカップ開催:
    米国、カナダとの共催となるサッカーワールドカップに向けたインフラ整備と観光需要が、消費マインドを刺激し、内需を押し上げる効果が期待。
  • リスク:
    2026年のUSMCA見直し協議や、米国の関税政策が最大のリスク要因でありますが、サプライチェーンの統合度合いを考慮すれば、極端な排除は難しいとの見方が強い。

6.5 【米国】依然として強力な「王道」

新興国の追い上げがあるものの、米国株(S&P500)は2026年も堅調な推移が予想される。AIによる生産性向上効果がEPS(一株当たり利益)の成長を支え、S&P500は7,800ポイントを目指す展開となるだろう29。ただし、市場の集中度が極めて高いため、ボラティリティへの警戒は必要である。

第7章 結論:2026年に向けた投資戦略

7.1 2025年の教訓と総括

2025年のオールカントリー投資信託の躍進は、「AIの実装」が世界的な産業テーマとなり、それに「各国の構造改革(韓国のバリューアップ、日本のガバナンス改革)」と「マクロ経済の好転(欧州・南米)」が重なった結果です。米国一辺倒ではなく、適切なタイミングで他国市場がアウトパフォームすることで、ポートフォリオ全体のリターンが向上した事実は、グローバル分散投資の有効性を強く証明しました。

7.2 2026年の戦略的アロケーション

2026年は、AI投資の広がりと金融政策の分岐により、国やセクターごとの選別色が強まる年となる(はず)。オルカンへの投資をコア(中核)としつつ、以下のサテライト戦略を検討することが有効ではないでしょうか。

  1. 「リバーサル(逆張り)」としてのインド:
    2025年の調整を経て割安感が出たインド市場は、長期的な成長ストーリーと需給の好転により、高いリターンが期待。
  2. 「成長フロンティア」としてのベトナム:
    9%成長を目指すベトナムは、リスクはあるものの、ポートフォリオの成長エンジンとして魅力的。
  3. 「政策期待」の日本と韓国:
    サナエノミクスやバリューアップ・プログラムの進展により、企業の資本効率が改善する日韓市場は、引き続き有望な投資先。
  4. 「AIインフラ」へのセクター分散:
    半導体だけでなく、電力、データセンター建設、ソフトウェアなど、AIエコシステム全体への分散投資を意識。

世界経済は「グレート・インフレクション」の真っ只中にあり、変化のスピードは加速しています。しかし、構造的な成長ドライバーを見極め、国や地域の多様性を活かした投資を行うことで、2026年もオルカンは投資家の資産形成に資する強力なツールであり続けるでしょう。

※今回の分析に使ったHPは以下の42のサイトなどになります。


免責事項:

本報告書に含まれる予測や分析は、提供された情報に基づくものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任において行ってください。

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